「桜尾さんって…」
夏川くんが口を開いた。
「…初めて会ったときから思ってたんですけど
……“さくら”みたいな人…ですよね」
“さくら”みたいな人…。
「どういう意味?」
桜尾さんが問う。
「“さくら”……具体的に言うと“ふじばかま”かな。
“ふじばかま”の花言葉が '思いやり'、'ためらい'なんですよ。優しい感じの花なんです」
そうだった。
出会ってからまだ少ししか経っていなかったからか、夏川くんのこの一面を初めて目の当たりにした。
「はな…好きなんでしたね」
私のその一言で夏川くんの表情が陰った。
「変人………って思いました?」
元々低い夏川くんの声が一段と低くなった。
「…別に………よく言われるんですか?」
予想と違う返答に驚いたのか、少し表情が明るくなった。
「……はい。よく言われるんです。男のくせに、変人変人ーって」
やっぱり。よく言われるんだ。
「思いませんよ、変人なんて。逆に………」
うつむき加減で私は言った。
「憧れます」
「えっ………?」