扉の前に立った彼とカウンターの上で頬杖をついている桜尾さんを交互に見ていたら二人の表情がいきなり変わった。
彼の方はとても嬉しそうに。
桜尾さんも……?なんだか迷惑そうな顔だ…。
「巳汐!!」
金髪に近い茶髪の彼が嬉しそうに叫んだ。
えっ…?知り合い?しかも下の名前を呼び捨て……。
桜尾さんは頬杖をついたまま、あからさまに嫌そうな顔をして、彼に言った。
「何でここがわかった?」
驚くほどに抑揚のない声だ。
機嫌が悪くなったのだろうと容易に想像できる。
「そ…そんなに怒んなくていいじゃん、巳汐」
扉の前に立つ彼がちょっと焦ってそう言った。
(誰なんだ?友達?)
そう考えていると桜尾さんが説明してくれた。
「彼は僕の高校時代の友人。名前は'彩り生きる'で'彩生'、'木の芽'で'木芽'。今はあんなだけど昔はよくいじめられてたんだ。それを僕が助けてしまってつるまれるようになった、と」
“彩生 木芽” さん。
パッと見金髪の髪に、カラフルなシャツに白のパーカー。下はジーンズズボン。
単調な服装の桜尾さんに比べると派手だ。
(ホントに友達?)