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三日月

月を凍らせて、しゃりしゃりとスプーンで一口掬って食べた。
今夜は幽体離脱な気分。
散歩に出掛けよう、黒猫には会わないようにしながら、みゃあと呟いて。
口の中でゆっくり溶けていくお月さま。
今日もごちそうさまでした。やわらかく甘い味わい、甘ったるくはなくて後味は涙をカシスでわったような味だ。レモンとはちょっと違う。
夜の影は、街灯の影。夜を告げるのは、星じゃなくて彼らというのが最近の主流らしくてさ。
月の光で影を作って、凍ってゆくところを眺めた。しゃりしゃりしゃり、スプーンを伸ばすのは我慢のしどころ。
頃合いを見てつん、とスプーンで凍った影をつついたらぱらぱらとそれは地面に逃げた。
やっぱり、もう一口。凍ったままの月、しゃりしゃりとスプーンで一口掬って食べた。
背後でみゃあ、という声。
走って帰った。ただいま。

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