紫陽花が色付き、露に塗れる様が美しいであろうこの頃、そちらに変わりはないですか。僕は相も変わらず土の中で、君の好きなところとその数を考えながら過ごしています。
ちなみに、先ほど思いついた「寝顔が意外とぶさいく」で6000と24個目になります。君が来てくれている間なんかは考えるのを中断しているので、そのうちいくつまで考えたのか忘れてしまいそう。
僕がこんな風に、もうほとんど形を成していないこの手で便りを書いているのは、君に謝りたいことと、君に聞いてもらいたい我儘があるからです。
まずは、謝りたいこと。僕が君にひとつだけ、嘘をついてしまったこと。「生まれ変わっても君が好き」。僕はこのように言って、君をお嫁さんにもらいましたね。
けれど、よく考えてみてください。生まれ変わった僕は、きっと僕ではない、別の僕です。僕ではない僕が君を好きになるのは面白くない、よって、今の僕に生まれ変わる気はないのです。
―――だからね、どうか許してください。ぼくがむくろのまま、きみがすきになってくれたぼくのまま、きみをすきでいることを。これが、君に聞いてもらいたい我儘です。
君のことが好きでした。
結局のところ人が人を信じるなんてことは不可能で、真心は能天気な誰かの吹く口笛のようなものでしかなく、期待をすればしただけ傷つき、信じたら裏切られ、誰かを想って泣いたり笑ったりするのは馬鹿のすることで、「しあわせ」は、絵空事である。そう、思っていました。
思っていたんだよ、僕は。
君というたからものに出会う、あの日までは。
君のことが好きでした。
きみのことが、すきでした。
天候不順の時節柄、風邪など引かないよう気をつけてください。いくら蒸し暑いからって、お腹を出して寝たりしないように。それでは、僕は君の好きなところとその数を考える作業に戻ります。・・・・・・いくつまで考えたんだっけ?