少し考えをまとめよう。
・妥協することは大人になること。
・妥協できる人間は大人。
・社会制度への帰属は妥協の産物。
ということはつまり。
・妥協という決断をしなければいつまでも子どもでいられる。
・妥協とは社会制度に帰属すること。
したがって。
・大人になるということは社会制度に帰属すること。
・妥協という決断をしなければ現状を変えなくとも(一見社会制度に帰属しているように見えても)、いつまでも子どもでいられる。
・言動が子どもっぽかろうが何だろうが妥協できれば大人であり、逆に落ち着いていても妥協しなければ子ども。
となる。
『四十男の結婚』に戻ろう。
外界と断絶して、脳内に王国を作り、イメージの国の住人になってしまった四十男だったが、同じアパートの階下の住人である女性に強引に外界に連れ戻される。女性は四十男の理想とかけ離れたタイプだったが、四十男の考えていることを映画会社に売り込み、契約が成立したことをきっかけに、四十男が交際を申し込み、たちまち男女の仲となる。映画はヒットし、大金を得た二人は結婚する。結婚後、四十男はレストランの若い女性従業員に高価なプレゼントをしたり、商売女とデートしたりと軽い浮気をするものの、すぐに幻滅することとなり、妻との絆が深まってゆく。
人は妥協することで(折り合いをつけると言いかえてもよい)、幸福を手に入れ、いつまでも妥協しないことで不幸になるのだろう。もっとも妥協しないことによって快楽を味わうことはできる。