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続々・シューアイス

西内は夕方、スパイクで荒らされたグラウンドにトンボをかけていた。部員達が散り散りになって、赤茶けた地面をならしている。ハルヒコとシューアイスを食べたのもこんな日だった、と西内は自分が幼かった頃を思い出す。あの日は、夏休みの丁度真ん中の、真夏日だった。多摩川をずっと行けば海に出ると信じて、西内とハルヒコは朝早く、親の目を盗んで出掛けていった。まだ朝日がのぼらないうちから自転車をこいで、クタクタになるまで行ったけれど、一向に海は見えてこなかった。家から持ってきたお握りやチョコレートを食べ尽くして、いよいよもう少しも進めなくなったとき、西内は、ハルヒコの真っ直ぐな横顔を見た。丁度、今日のような西日に、真っ赤に照らされ汗ばんだ、真っ直ぐな横顔を見た。「僕ら、かっこわるいな。」ハルヒコは吐き捨てるように言った。「また、いつか海を見に行こうよ。今日はもう帰ろう。」西内は呟くように、諭すように言った。ハルヒコは小さく頷いて、来た道に向き直り、ヨロヨロと自転車をこいだ。途中、何度も休憩を取り、その度にハルヒコは悔しそうに歯噛みして、かぶりを振っていた。夜になり、街の灯りが点々とつき始めた頃、僕らはようやく開始地点に戻ってきた。ハルヒコの家の前までいくと、彼の母が神妙な面持ちで待ち構えていた。散々に怒られ、僕の家にも連絡を入れられた後、ハルヒコのお母さんは僕らに二つずつシューアイスをくれた。一度に二つのシューアイスを食べるのは御法度だと知っていたけれど、お食べ、と言われて、僕らは貪るようにしてそれを食べた。今思えば、あのときからハルヒコと本当の意味で友達になったのだ、と西内は改めて思う。あの時の、カラカラの喉に染み渡るようなシューアイスの味が、遠い記憶となって甦ってくる。

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