君と僕以外の全員が居なくなってしまえばいいのにな。「今日の晩ごはんは何だろう」というような調子で、彼は呟いた。貴方と私のふたりだけが居なくなる方がずっと簡単じゃないの。「今日の晩ごはんはオムライスよ」というような調子で、私も呟いた。
プレゼントをしまった箱へリボンをかけるように、彼は両のてのひらで私の首を包み、緩やかに力を込めていく。私は抵抗しなかった。彼に表情はなかった。ああ、このまま彼と私のふたりだけの世界へ行くことができたら、一緒にオムライスを食べようか。
いつもは恥ずかしくて出来っこなかったけれど、特別にケチャップでハートマークを描いてあげてもいい。意識を遠退かせながら笑った私を見つめる、彼のポカンとした様子がおかしくて、思わず涙が頬を伝った。まるで悲しくて泣いているようだった。