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存在の耐えられない軽さ

 あなたは五十代の主婦である。あなたはある日、五十代女性の女性ホルモンのレベルは、五十代男性のそれよりも低いという週刊誌の記事を目にする。そういえば最近、おばさんというよりもおじさんになってきているような気がする。あなたはためしに夫のスーツを着て外出してみる。スーツはやや大きめだが、特別じろじろ見られることもない。気をよくしたあなたは、閉経してから生えてくるようになったひげを伸ばすことにする。とてもしっくりくる。自分は男性として生きたかったのだ。もっと早くに気がついていれば。まあしかし過去を悔やむなど、もし違った性別に生まれていたらなどと妄想するぐらい幼稚なことだ。あなたはリビングでくつろいでいた夫に、これから男として生きていきたいので離婚してほしいと頼む。
「いつかこんな日がくると思っていました」と夫。
「そうか、では話が早いな」とあなた。
「わたしは今日から女として生きます。それなら離婚しなくてもすむでしょう」
 で、二人はお互い性別を変え、いつまでも仲良くくらしましたとさ。何だこの話は。

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