毒林檎の皮で染め上げた唇でキスをしてから、叩き割ったガラスの靴で心臓を突いた。そうしてゆっくり君を壊して、こうしてあっさり君は壊れた。すべては君が優しいせいだった。乳白のもやを緩やかに切り裂き、淡藤から瑠璃に変わりゆく空を見上げた。もう少し早く、その美しさに気が付きたかった。私のせいで赤黒くなった君の隣へ寝転ぶ。毒林檎の皮だった雫とガラスの靴だった破片、それからこんなときですら柔らかな東雲、そんなものにまみれて私も眠ろう。太陽をびっくりさせてしまう前に眠ろう。
すべては君が優しいせいだった。
君があんまり優しいせいだった。