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七月時雨 #3

少年は、すっかり日の落ちた丘の頂上に立っていました
そこからは、見下ろせば夜の闇に抗うかのような僅かな灯りが、点々と見えました
空を仰ぐと手が届きそうなほど近くに星屑が散りばめられていて、いかにも神秘的な夜なのでした
「……ユーリ、さっさと行くぞ」
少年は夜に溶け込むような銀髪を揺らし、振り向きます
彼の“悪友”の方へ
「あぁ、今行くよ」
ユーリと呼ばれた少年は、手近な石を二つと木の枝を拾い上げ、易々と火を点けました
妙なくらい静まり返っている丘の上で、カキッと石が小さく鳴り、麓を見下ろすと見えるような僅かな灯りが生まれました
目の前には、無人の洋館
さながら神殿のような洋館は、昼間家の窓から見上げたそれよりも遥かに大きく、彼らを待ち受けています


「何も怖くない」


誰かがそう、言い聞かせるように言ったかのように聞こえました

少年の白い腕が、重厚な、紋様のあしらわれた木製の扉の真鍮の取っ手へと伸びていきます

鍵は、案の定掛かっていませんでした
ギィィイイと扉が耳障りな音を立てて開いていきます

そして、ぶわっと微かに埃っぽい冷気が溢れ出て……

少年は、一歩、その昏い昏い洋館の内部へと足を踏み出したのでした

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