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七月時雨 #9

「嘘なわけねーじゃん」
ヴァレットは言い捨てました
「なぁ、お前さ……」言いかけて、一瞬ユーリの視線に正面から対峙すると、瞬きして舌打ちして、馬乗りで掴んでいたユーリの襟から乱暴に手を離して立ち上がりました
足早に去っていくヴァレットの背は、すぐに人混みに紛れて消えていったのでした


その夜のことです
ヴァレットが、そのまま姿を消してしまったと、ユーリは知ることになるのでした
月が、不気味に、不吉に、黒い空に揺らめいていました
まるで、洋館を押し潰そうとしているかのように

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