「嘘なわけねーじゃん」 ヴァレットは言い捨てました 「なぁ、お前さ……」言いかけて、一瞬ユーリの視線に正面から対峙すると、瞬きして舌打ちして、馬乗りで掴んでいたユーリの襟から乱暴に手を離して立ち上がりました 足早に去っていくヴァレットの背は、すぐに人混みに紛れて消えていったのでした その夜のことです ヴァレットが、そのまま姿を消してしまったと、ユーリは知ることになるのでした 月が、不気味に、不吉に、黒い空に揺らめいていました まるで、洋館を押し潰そうとしているかのように