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七月時雨 #11  ―最終話―

ヴァレットが返した拒絶に、ユーリは耐えることができませんでした
フラッシュバックの、逆サイドの再現に

そして、ユーリは、結論を出しました
帯に挟んでいた破魔の短剣を抜き、一閃したのでした
銀色の鋭い光が空を斬って、空を斬って―

ヴァレットを、斬り裂きました

それは、姿を消してしまったヴァレットとは違った形の結論でした
しかし、ヴァレットを斬ったはずの手に、一切手応えはなかったのです
気づけば、彼の姿は霧散したかのように、そこにはありませんでした
「幻影……?洗礼……?」



ユーリは、洋館を見上げていました
どしゃ降りの雨に打たれながら
洋館の扉は、軋みながら、ひとりでに閉まっていきました
まるでユーリがヴァレットを拒絶したのと同じように、ユーリを内部から拒絶するかのようでした
悪友達はユーリがなかなか戻らないうちに雨に降られて帰ったようです
ただ、握りしめた白銀の刃から、ぽたぽたと、雨露が滴っていました
いつまでも いつまでも



その夜、町は突然の雷雨に襲われました
一晩中雷鳴は轟いて、町から静寂を奪っていました
洋館が真っ黒な雲の下、悪魔の棲む館と思われるような不気味さで、麓を威圧していました

次の朝、雷雨が嘘のように晴れわたる空の下、洋館は跡形も無く消えていたのでした
雷に打たれて、木っ端微塵になってしまったのだと、人々は思いました
ひとりの、少年を除いて
ひとりの、自分を受け入れない世界を拒絶した、少年を除いて
少年は、“洋館”が自らを、世界を拒んだのだと……これがその成れの果てだと考えました
つまりは……。


そして、
曇ひとつない、青空の下で
少年は、全てを負って生きていくのでした


これが、ある夏の、拒絶の物語の全て

  • #“11”は、雨粒の軌跡の形
  • #雨上がりの“#12”はもう来ない
  • #いかがでしたでしょうか?感想くださると嬉しいです
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