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あめ

雨がふる。
水たまりを車が撥ねる。
赤い傘さしたあの子のスカートがひらり。
パシャッ。
あの子のスカートぐっしょり。
お気に入りの靴も、色が変わる。
ぐじゅぐじゅと、歩くたびに不快な音を立てる。
まとわりついた雫が、脚をゆっくりとつたって落ちてゆく。
傘をくるくる。
どこかで嗅いだことのある、雨の匂い。
あれはどこだっけ。
いつだっけ。
とおいとおいむかしの、そのまたむかし。
熱帯雨林のなかで、まだ四足で歩いていたときのことだっけ。
まあ、いいや。
忘れた。
むかしの記憶。
どうでもいいなあ。
雨がふる。
なつかしい匂いと、きみの濡れた髪。
わるくないな。
雨よ雨、もっとふれ。
ぜんぶ洗い流すまで、もっともっと。

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