傘を忘れた
あんなに晴れていたのに
暑い日が続いたこの頃にしては
珍しく空は黒く染まっていた
「ついてないなぁ」思わず口をつく
最近はなにもうまくいかない
ずぶ濡れになった制服姿で
人のいない小さな丘に1本だけある
大きな木に寄りかかるようにして座った
雨が止むまで待っていよう
そう思っているうちに
気付けば眠りについていた
大きなしずくが右の頬にキスをした時
眠り姫のように夢から呼び戻された
あたりは水の雫が輝きを放ち
空には夢よりもずっと幻想的な
七色の橋が鮮やかに浮かんでいた
「悪くないじゃん」少し顔が緩んだ気がした