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僕の名は。

匠〈たくみ〉、それが僕の名前だ。
僕はこのありがちな名前を嬉しいとは思わず、珍しい名前に憧れを抱いたことがある。
また、〇〇の匠とか、匠という名の商品、師匠の匠など、とても優れている人、物に使うこの字をかっこいいとは思いつつも何も優れてない僕には似合わない、そんな風に思っていた。
名前の由来を初めて聞いたのは小学生の頃だった。

「なんで、僕の名前、匠にしたの?全然、匠っぽくないのに。」
不満気に聞いた僕に父は呟いた。

「師匠の匠。」

父はやっぱり、優れた子にしたかったのか。心の中で、こんな僕に育ってしまったことを父に謝った。
しかし、父は後に続いてこう言った。

「匠、優れているものに使う言葉だ。でも、お父さんはお前に優れた人になってほしくてつけたのではない。1つのことに努力してその1つのことに一生懸命になってその1つのことに前向きに進んでほしい。そういう願いがあるんだ。だから、優れようと思わなくていいんだ。1つのことに夢中になって一生懸命になってほしいんだ。」

1つのことに一生懸命か…。

この言葉が響いたのかどうかは分からない。でも今、僕は福祉、看護の道に一直線に進んでいる。


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