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黒猫

 書を捨てて、街に出た。これからは世間という大きな書物を読むのだ。あてもなく電車を乗り継ぎ、適当な所で下車。風情のある旅館にチェックイン。退屈だ。本でも持ってくればよかった。ああそうだ。書は捨てたのだった。風呂にするか。
 露天風呂から上がり、部屋に戻る。美人の仲居さん。テーブルに、チーズバーガー、コーラ、ポテト。
「これが夕食?」
「そうです」
「まじっすか」
「はい。まじです」
「ずいぶんフリースタイルなんだね」
 チーズバーガーをかじり、庭に目をやる。黒猫が、死にかけの蝉をもてあそんでいる。

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