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陰陽師(前編)

 娘の入学祝いに、義父から市松人形をもらった。いわゆるお菊人形というやつだ。「ふつうランドセルとか勉強机じゃない?」 と、主人に言ってみる。
「ランドセルやら勉強机やらはお前の実家で用意してくれたじゃないか」
「そうなんだけど。うちの実家だってとくべつ裕福なわけじゃないんだし、相談して決めてくれてもよかったでしょう」
「しょうがないだろ。親父はそういうやつなんだよ」
 わたしは、でも、と言いかけるが、黙ってしまう。
 入学して、娘の様子がおかしくなった。明るい子だったのに、あまり笑わなくなった。夜、たびたびうなされるようになった。明け方、むっくり起き上がり、壁に向かって話しかけていることもあった。
 ある日、娘にきいてみた。
「学校で嫌なこととかあるの?」
「ううん」
「そう?……なんか気になることとかない?」
「うーん……あのね」
「なあに?」
「おじいちゃんからもらった人形がこわいの」
 どうしたらいいのだろうか。せっかくいただいたものを押し入れにしまい込んでおくわけにもいかない。おはらいのようなことをしたほうがいいのだろうか。ネットでいろいろ検索してみる。

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