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陰陽師(後編)

「ごめんください」
「陰陽師さんですか」
「はい」
「こちらです。上がってください」
「すみません。まず、前金で五千円、お願いします」
「ああ、はい」
「どうも。領収書です。……娘さんはいらっしゃいますか?」
「はい。いますけど」
「ちょっと娘さんとお話よろしいですか?」
「はあ……あの、人形は?」
「それは後で」
 しばらくして、娘は元の明るい子に戻った。むしろいままでよりはきはきとして活発になった。

「問題ないですね」
「でも、おはらいは」
「娘さんにきいてみたらね、お菊人形にまつわるこわい話が、あの例のね、髪が伸びるやつ、あるでしょう。それをテレビで見てね。それからあの人形がこわくなったらしいんだな。……壁に向かって話しかけてた?……あれぐらいの年だったら寝ぼけることなんてよくありますよ。うなされる? 冷えると思って布団かけ過ぎなんじゃないですか? 小学校に入学して、新しい環境に対するストレスもあるんでしょう。軽い睡眠障害ですね。優秀な子どもほどストレスを感じるものなんですよ。乗り越えなきゃ成長できませんからね。親が手を出し過ぎるのはよくないです。とにかくまあ、人形は、おじいちゃんがあなたが健康ですくすく育ってほしいって思いからプレゼントしてくれたんだよ。だからこわがる必要はないんだよ。どちらかって言ったらかわいがるべきなんだよって説明したら納得してくれました。
 お母さんはなんでも一人で決め過ぎなんじゃないですかね。もっとご主人と話し合われたほうが。……う〜ん。本気でぶつかってみなければ、ご主人も本気になってくれませんよ。では」
「ありがとうございました。……あの」
「はい」
「カウンセラーになったほうがいいんじゃないですか?」
「ああ。カウンセラーにはなれません」
「どうして?」
「高卒なんで」
「あ……」
「ではこれで」

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