あなたはあまりぱっとしない女子大を出て、これまたあまりぱっとしない企業に就職する。入社して三年、給料は大して上がらず、恋人なし。
休日、なんの予定もないあなたはベッドでいつまでもぐずぐずしている。一人旅がしたいなあなんて考えたりしながら。
あなたはリゾートホテルにいる。プールで泳ぎ、シャワーを浴びてからバーへ。カウンターに座り、サービスのカクテルを飲んでいると、いつからいたのだろう。隣にピエロがいる。ピエロはあなたをじっと見つめているが、あなたはとくに気にせず、一人の時間を楽しむ。
目覚めると、夜になっている。あなたは近所のスーパーへ行き、半額になっている子ども向けのランチセットを買って家でそれを食べる。ランチセットには、風船がついている。
月曜日、あなたは上司に退職願を出し退社する。コスプレのショップでピエロの衣装を手に入れ公園に向かい、ベンチでささっとピエロのメイクをすると、バルーンアートを始める。開始後いくらも経たぬうちに遠足に来ていた子どもたちに囲まれる。あなたは手ごたえを感じ、イベント会社を起こす。
イベント会社は大成功する。数年後、あなたは異業種交流で知り合ったゲーム会社の社長と結婚し、三人の子をもうける。子どもはすくすくと育ち、三人とも一流大学を出て成功する。
孫の誕生パーティーで、あなたは久しぶりにピエロの格好をしてバルーンアートを披露する。幸福な人生だ。ただ、自分が本当に望んだ人生なのかどうもしっくりこない。あなたは次々と動物やら飛行機やらを作り孫を驚かして満足するが、違和感は消えない。