森の中で、その日最も秋っぽい色をした切り株に、その日最も秋っぽくなる時間で。
こんな待ち合わせは頼りないこと甚だしいのに、必ずみんな揃うんだ。遅刻もいなければすれ違いもない。ここにちゃんと揃うことが出来ることに、各々プライドを持っているからね。
毎日の議題は変わらず、我先に秋を見つけんとする各々の自慢大会。
夕焼け、と誰かが言えば、負けじと土の匂い、と他の誰かが返す。
かと思えば、いやそれは自分が先週に見つけていた、だの、そんなのは秋らしさではない、夏の名残だ、と言い出す誰か。
みんな、自分が真っ先に秋を見つけた実感が欲しくて必死なんだ。
じっと眺めながら、この白熱した顔に最も秋を感じるけれど、黙って行く末を見守っている。それがぼくの役目。なかなか楽しいんだ。
日によってまちまちだけど、大抵おひさまが活動し始める頃にはみんなまどろみながら帰ってゆく。
それじゃ、明日も。最も秋っぽい色の切り株で、最も秋っぽくなる時間に。