3

無題

君に恋文を贈ろうと
筆を執って はや3日
言葉は一向に沸いてこなくて
物書きの僕が こんなに苦戦するなんて
本当は君のこと 愛していないのかもしれない
そんな馬鹿げたことが過ぎって筆を置いた
固まった膝に苦心して部屋を出ると
君は小さな明かりで繕い物をしている
僕が枝に引っ掛けた着物の袖に
綻びを誤魔化すように花が咲いている
お仕事ご苦労様ですと微笑む君が
申し訳なさそうに眉を顰めて
男の人に花の刺繍なんてと それを隠した
良く出来ているねと手に執った
その柔い手は すんなりと馴染んで
嗚呼 愛を囁くのに
筆なんぞを頼ったのが間違いだったと
途端に降り積もる言の葉に笑った

レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。

  • な、なんてお洒落な文章なんだ‼︎
    何時も読み終えては血が沸騰します。
    これからも楽しみにしていますので
    宜しくお願いします。

  • 巧みな言葉選びに語彙力とセンスを感じ
    読んだ後に感嘆の一言しか出てきませんでした

    私は場面回想と情景描写が特に素敵だと
    思いました

  • 歌時雨 さん

    レスありがとうございます。
    気に入っていただけたようで嬉しいです。
    また歌時雨さんに響くような詩が
    書けた時には、良ければ教えて下さいね。


    黒髪のパラディン さん

    レス下さって嬉しいです。
    詩を詠む時にはいつも言葉選びに
    気を遣うので、
    そこを褒めていただけると励みになります。
    ありがとうございます。