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無題

雨粒が屋根へと降りて
彼等の足音があの人を起こす

ふるり と揺らいだ睫毛の
其の先に留まった雫には
ふんだんな憂いが渦巻いている

閉じきらないカーテンの
其の隙から漏れた街灯が
鴨頭草色の渦を突き刺して
けれど砕くには少し足りない

ふんだんな憂いの
渦を砕く月影には
分厚い雲が掛かって
その優しい眼差しは注がれない

彼等の足音に起きたあの人は
幾らかの瞬きの後
溜息で掻き混ぜた憂いを
自らの指で砕いてみせた

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