雨粒が屋根へと降りて 彼等の足音があの人を起こす ふるり と揺らいだ睫毛の 其の先に留まった雫には ふんだんな憂いが渦巻いている 閉じきらないカーテンの 其の隙から漏れた街灯が 鴨頭草色の渦を突き刺して けれど砕くには少し足りない ふんだんな憂いの 渦を砕く月影には 分厚い雲が掛かって その優しい眼差しは注がれない 彼等の足音に起きたあの人は 幾らかの瞬きの後 溜息で掻き混ぜた憂いを 自らの指で砕いてみせた