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ポケットの中の

わたしには11年歳の離れた兄がいます。物心ついたときには兄は高校生とかで、体や声は大きいし、怖いという感情しかなくて、口をきいたことはほとんどありません。そしてすぐに大学進学で家を出たため、わたしたちはほぼ他人のような兄妹でした。他の家はもっと兄妹で仲がいいのに……と、本当はもっと仲良くしたかったのです。すこし前に、わたしは母からある告白を受けました。「あんたのお兄ちゃんは、ほんとの兄ちゃんじゃない」と。母は1度離婚していて、兄とわたしは父親が違う兄妹だったのです。それを聞いてわたしは、涙がとまりませんでした。顔を合わせることは無いし、喋ったことも数えるほどしかないのに、どうして涙が出るのかわかりませんでした。母も意外に思ったようで、そんなわたしにあるアルバムを見せてくれました。それは、まだ赤ちゃんのわたしの隣で、笑顔の兄が寝そべっている写真でした。母が教えてくれました、「お兄ちゃんはあんたの面倒をずっと見ててくれてたんだよ」と。兄はきっと、心細かったと思います。お父さんが変わって、複雑な気持ちだったはずです。それなのに産まれてきたわたしを、こんなに可愛がってくれていた。他人のようだった兄との唯一の繋がりであった血が否定され、他人のような気がしていたけれど、それは違った。小さい二人には確かな絆があって、でも今、わたしたちには何もありません。『LOSER』にもあるように、《何もないならどうなったっていいだろ》。わたしは今、こんな気持ちです。何もないからこそ、ここから始めたい。そう思えるようになったのは、米津先生のお陰です。わたしがポケットに隠しているのは、「お兄ちゃんに『ありがとう』を言いたい」という気持ちです。兄に話しかけるのに勇気がいるなんて、おかしいことだと思います。でも、このまま他人のままで終わらせたくないです。米津先生、わたしに一歩を踏み出す勇気をください!

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