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光を君に

君に世界を教えたくて
真っ新なキャンパスに筆を走らせる
一つ一つ彩を重ねるごとに
想いを込めてゆく

外に出れない君のため
僕がただ一つ得意とする事で
君に世界を見せてあげる

「ほら見て、外はこんなに綺麗なんだよ」
絵を持って君の元を訪ねる

どうしてだろう
君の表情は晴れない
ただ哀しげに眼を伏せるだけ

「ごめんね…。私、眼が見えないの」
震える君の声

「そんなっ…嘘だ。だって君は…」
だって君は普通に歩ける
今だって、普通に眼を開けて
僕の眼を見て話してる

「普通だって言いたいんでしょ。歩けるし、眼を合わせて話せるから。…でも、これは眼で見て判断してるんじゃないの。声で、音で判断してるの」

神様は意地悪だ
どうして彼女に光を与えなかったのだろう
何も言わない僕に君は

「ごめんなさい、言わなくて。怖かったの。君に嫌われるんじゃないかって…」
「嫌いになんてならないよ。僕は君を嫌いになったりしない」
「じゃあ…これからも此処に来てくれる?」

君はまだ不安そうで
組み合わせた手は彩を失くして白い

「もちろん。次来る時は面白い話を持ってくるよ」

君は嬉しそうに微笑んだ
その笑顔に僕の心はチクリと痛んだ



僕は彼女に隠している事がある
僕は普通の人と違う
眼の色だったり、髪の毛の色だったり
肌の色だったり…

僕がこんな姿だと知っても
君は変わらない笑顔を
僕に向けてくれるのだろうか…

君に拒絶されるのが恐ろしくて
僕は君にこの事を伝えられずにいる


狡い僕を許してほしい

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