「なに、星羅。急に叫んだりして・・・?」
有彩が何か言ってる。しかし私の耳には全く入ってこなかった。
私は慌てて後ろを振り返った。
私の視界に入ってきたのは、茶色のリュックを背負い、自転車に乗って走り去っていく1人の男子高校生。
「・・・間違いない」
「え?」
「間違いないよ、有彩・・・」
「なにがよ?」
私は興奮しているのを抑えて、短く一言。
「・・・大晟。」
さすがの有彩も気づいたようだ。
しかし有彩が振り返った頃には、大晟の姿は見えなくなっていた。