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コーヒーブレイク③

この喫茶店に通いつめて1ヶ月が過ぎた頃から
店主は僕にいらっしゃいと言わなくなった。
そのかわりに「おはよ。」と呟く。
僕はなぜかそれが嬉しかった。

ここの店主とはよく話があう。
映画の話。お笑いの話。漫画の話。女性の話。
驚いたことに音楽の話もあう。
僕が古いタイプの人間だからなのか。

この町では数少ない憩いの場。

就活が近いからか度々この喫茶店に就職出来たらなと思ってしまう。

でもここの店主とは野球の話だけあわない。
それは店主が生まれながらの阪神ファンで
僕が父親譲りの巨人ファンだからだ。
でも店主と阪神と巨人の話をするのは面白い。

最近この喫茶店の近くに某有名な大手ハンバーガー店ができたせいでこの喫茶店の客がたくさんとられたと店主は嘆く。
そのせいか店主はここ最近元気がない。
そんな店主を横目に勘定を済ます。

「マスター...」

「...なんだい?」

僕はいろんな言葉を押し潰し

「明日もまた来るよ。」と言い残す。

「...あぁ、またおいで。」という台詞は
店内に響いた扉の鐘の音とともに薄れてく。

なぜか店主をその喫茶店に置いてきたという気がしてたまらなかったその瞬間を今でも鮮明に覚えてる。

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