僕がこの喫茶店に通い始めて2年と3ヶ月がたった頃に僕は初めて珈琲とサンドイッチを求めに閉店間際の喫茶店を訪れた。
扉の鐘の音もどこかいつもと違う気がした。
入店して即座に僕は目を疑った。
TVのプロ野球で巨人が阪神にボロ負けしてるから?違う。
店内の客が5人をこえていたから?
違う。
店内のBGMが聞いたことの無い楽曲だったから?
違う。
じゃあ何故かって?
いたんだよ。この店に従業員が。
でもそれだけだったら僕はそんなに驚かない。
ひと目見ただけでわかったさ。大きくなってもその雰囲気、顔だちは何にも変わりはしない。
彼女だった。僕の初恋相手だった。
僕の目の前から突然居なくなった彼女は、
僕の目の前に突然に現れた。
昔から美人だった彼女は化粧を覚えて犯罪的に美人になっていた。
扉の所で突っ立ってる僕に気づき
いらっしゃいと聞きとりやすい美しい声が僕の鼓膜を突き破る。
慌てて注文をする。店主は阪神が勝ってるからかTVに釘付け。
僕は何を意識したのかいつもとは正反対のこの喫茶店で一番高いセットを彼女に頼んだ。
その時の店主の逆転満塁本塁打を打たれたかのような表情で僕を見つめた事と彼女の気持ちが良い返事はいつまでたっても忘れられないだろう。