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コーヒーブレイク⑦

僕は注文したセットを無言でむさぼった。
またたく間に完食。
勘定を済ます。
店内に響いたはずの扉の鐘の音も1番美味いであろうこの喫茶店のセットも何も感じれなかった。

次の日いつもと同じ時間。扉を開ける。
「おはよ。」
そこには店主1人。解りきったことだけど少し残念だった。
「ども。...いつもの。」
「...どした。昨日のは頼まねぇのか?」
冗談気味に僕に問う。

僕は出てきた珈琲を飲みながら昨日の彼女を思い出す。
「ねぇマスター。昨日の女性は誰なの?」
確かめたくてマスターにたずねる。
「...あぁ、アレだ。俺の娘になる子だよ。」
僕はその意味がよく解らなかった。
「...そ...っか。」
聞いた割に気のない返事。
「つまりアレだ。俺の息子の婚約者よ。」
その言葉に僕は大きな衝撃を受けた。
「...そ...っか。」
「なんだ?惚れたのか?」
僕をおちょくる様に店主が問いかけた。僕はくい気味に咄嗟な抵抗
「ちっ...ちがうよ。...はい勘定!」
「毎度ぉ、またおいでぇ」
店主は嬉しそうに僕をおちょくる。その顔はガキンチョの様に輝いてた。

僕はそんな会話に嬉しさと切なさと恥ずかしさと虚しさを覚えた。

今日は何だか扉の鐘の音が少し濁って聴こえた。

彼女の顔を見る勇気が無いからかもうこれからは夜の喫茶店には行かないと心に誓ってみた。

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