僕がこっちに来て早2年。仕事はなんとなく慣れてきた。毎朝インスタントの珈琲を飲み。
満員の電車に揺られ会社へ向かう。
ネクタイをつけるのも慣れたもんだ。
月給は安いなりに親からの仕送り無しで楽しく暮らせてるし、会社での上下関係も上手くやってる
ただ1つ。たった1つ毎朝のルーティーンが欠けただけで大学に入る前と同様に朝が嫌いになりかけてる。
会社に入ってから覚えた酒はどうも僕には合わない。でも上司の機嫌とりに今日も酒を飲む。
「また来るよ」
店主に言い残したその言葉は今はどこかにいってしまったよう。
何もかもが愛しくなる。
扉の鐘の音。珈琲の香り。半熟の卵。
流れる音楽。店主の声...面影。
でもここには何も無い。
誰に向かって発してるか解らない「行ってきます」
誰もいないこの部屋に響くは扉の閉まる音。
ただそれだけ。
行ってきます。