1

コーヒーブレイク⑬

結婚式はスムーズに進む。
流石この職のプロたちだ。もう慣れたものか。

僕の高校時代の友人がスピーチで笑いをとり
妻の友人が涙を誘う。

至って普通な結婚式。僕達にはそれが丁度良い。

楽しい式ももう終盤にさしかかる。
テーブルに運ばれる美味しそうな食事。
キンキンに冷えてる水。対して熱々の珈琲。

うん。やっぱり好きだこの香りは。
あの時からか珈琲の香りが好きになったのは。

...違う。違う違う違う。違う違うんだ!
僕は確かに珈琲の香りは好きだ。
でもこれは違う。違うんだこの香りは。

僕は運ばれてきた料理より先にその珈琲に手を伸ばす。そして見つめる。

やっぱりそうだ。これは...この珈琲は...。

味を確かめなくても解る。香りだけで充分だ。
何杯何十杯何百杯飲んだであろうかこの珈琲。

そうだよ。あの喫茶店のあの珈琲だよ。
僕はそばにいた式場の人に声をかける

「この珈琲はどこのですか?」
質問の内容に少し驚いた後
「はい。先程どうしてもこの珈琲を貴方に飲ませたいと申した者がおりまして...」

僕はその言葉を聞いた瞬間妻にトイレに行くと言い残し式場を飛び出た。

レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。