握り締めると意外な冷たさに心臓が跳ねた
あなたの手のようだ
手を開くともうそこには
温度の名残だけ
雪景色は無残に踏み荒らされ
やがて何事もなかったかのように
日常はやってくる
傷だらけの人
あなたは他愛も無いと笑うけど
手のひらに残った水滴は涙と似ていた
凍える指先がエントロピイの増大則に従って
僕の温度に溶けてしまえば良い
体温はおそらく 分けあうためにある
ひとつにはなれないとしても
あなたは雪
水になり 川になり 海になり
やがて生命を抱き締めるだろう
地球の描く曲線は案外とでこぼこで
だからこんなに美しいんだろう
いつか辿り着く暖かい場所で
際限なく幸いになるといい