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美徳とチョコレート

 センターを競ったり、売名のために自らスキャンダルをでっちあげたりなど、いったいいつからこの国は欲求を満たすためなりふりかまわぬようになってしまったのだろう。謙譲の美徳を知らぬのか。こうした風潮は沈静化するどころか年を追うごとにエスカレートする一方である。
 さて、中学時代からよく知っている男子がいてこいつが今日、放課後、後輩女子たちにきゃーきゃー言われながら追いかけられチョコレートをもらっていた。
 そこまではよい。
 その男子をめぐって女子たちが口論となったのだ。
 正直ひいた。
 最終的にその男子はもらったチョコレートをすべて返却、帰路についた。
 わたしは偶然をよそおって近づき、声をかけた。
「よっ」
「おお」
「どした、疲れた顔して」
「べつに」
「疲れてるときは甘いものがいいんだってさ。……これ、チョコ作ったんだ。食べて」
「ふーん。お前けっこう女子力あるんだな」
「食べてよ」
「……うまいよ」
 へっへっへっへっ。

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