子どものころ、浦島太郎の話をきいたとき、とてもショックだった。
竜宮城で楽しく過ごしてたらえらい月日が経っていたこと。さんざんちやほやしてくれた乙姫様からもらった玉手箱を開けたら老人になってしまったこと。親切だったおねーさんに裏切られてかわいそうって思った。
だがいまは違う。
そもそも浦島太郎の暮らしていた漁村なんていくら年月が経ったところで大した変化はないだろう。
でもさー、知ってる人がみんな死んでたら嫌じゃん。なんて考えるのはナンセンス(昭和のフレーズだね)。そんなことがつらいと感じるような人物だったらすぐにホームシック(これも昭和のフレーズだね)になって帰ってたはずだ。
だいたい竜宮城でさんざん楽しい思いをした後に漁師の生活に戻れんのか。
キャバクラと高級ホテルが融合したような施設で過ごした後にだ。
いい若者が思い出に生きるのはつらい。
思い出と思い出話は老人にこそふさわしい。
浦島太郎は実は玉手箱をもらった時点でわかっていたのかもしれない。玉手箱の中身と、乙姫の最後までゆきとどいたサービス精神を。