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雨だれ石を穿つ

サーッと音を立てて 窓の外は雨が降り始めた
しばらくするとポツリポツリ 雨だれが落ちるようになる
とがった屋根の先っぽで 膨らんだかと思うと そのまま落っこちて
石の上 すぐにはじけてしまう
水滴はそうやって 生まれては消えていく
何度も 何度も

水滴はとがった屋根の先端から 硬い石の表面まで
短い時間の間 何を考えているだろう
彼らはただ生まれては 何にも触れられることなく 
一直線に落ちて ただそれだけして消えていく
落ちる場所すら 最初から決まっている
ただ 同じ軌道の上を 同じ速さで 
何度も 何度も

一度くらい曲がってみたいと思うだろうか
それともこのまま何もなく 下まですうっと 落ちていきたいと思うだろうか
その短い間は 充実しているのだろうか
僕がいろいろな人やものに思うみたいに ちらりと僕のほうを見て
生まれ変わったらああなりたいとか なりたくないとか 思うだろうか

いろいろと考えて 感じて
水滴は水滴なりに 生きて 消えていくだろう
僕が最初 彼らに一種の憐れみを持ったことなど 実は大間違いで
彼らにとってその一生はとても意味深いものかもしれない

生きている価値なんて
自分で決めるもんさと うそぶいて
たくましく生きて
ああ良く生きた、生きてよかったと
そう言って死んでいくのかもしれない

雨が上がった

数日後 晴れ

石の表面には 深く 穴が刻まれていた 

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