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すきと書いて誰も彼も恋と読ませるからそんな世界を放棄することにしていた

ただ別に数字があがるだけじゃなく
わたしダイナリの数字が目につくようになってそれはまるで、押し出されるという動作のようだった。
すきと書いて、なんと読む。無言の当たり前の返答が無音のくせに返ってくる。だから、嫌いだ。
すきと書いて、すきと読む。それだけでいい、それだけが、いい。
惹かれる人は皆わたしショウナリの数字を持って、わたしイコールとわたしダイナリの数字に押し出されるようにして見えなくなった。元気ですか。すきです。そんな言葉が届かない場所へ。

気まぐれに緑のアイコンをタップする。あの人やこの人、つまり、わたしの惹かれて止まないあんな人やこんな人が、ふとした時に姿を見せていることがある。けれど、あーあ。今更お声がけするにはなんだかヘンテコになりすぎるタイミングだった。

ねぇ、変な感じだね。
故郷から乗り継ぐ電車は、季節と逆向きに走る。変な感じだ。時間は過ぎ行くはずだけど。
季節は時々、梅雨前線、あるいは桜前線だったりに乗っかって、しゃあしゃあとカーテンを引くようにしていくけど、そのカーテンの淵に垂直にこの電車は通るよ。

元気ですか。かつてわたしが熱烈にあっつあつの言葉を届けた全ての、素敵な名前々々。
覚えていらしてくださるかしら。開いて閉じて飛んで、いち、に、さん、繰り返して繰り返してようやく下書きを立ち上げたわたしを、わたしは、この場所がマッチ箱の側面にあるあの、火をつけるところだとしたらまさしくマッチでしかなかった、というように思い返しています。

時が、流れました、残念なことに、いいえ残念でしょうか、わたしの頭のあの真っ赤な火薬は、擦れて擦れてすっかり使い切られ、ただの木の棒っきれとなりそして、爪楊枝デビューを果たしました。

久方ぶりです、わたしを知る全てのみなさん。マッチ箱だって儚いものであると、わたしは知り始めています。知り始めているくせにしゃあしゃあと、こんにちは、そして、こんにちは。

  • すきって書いたらすしって読み違えるくらいでちょうど
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