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もうしばらくここにいよう。清楚な都会の女を眺めながら。

 駅構内をぶらぶら歩くうち、少し目が覚めてきた。歩くという運動が脳を刺激したのか、前方からやってきた清楚な感じのスタイルのいい女子高生が脳を刺激したのか。水色のブラウスを押し上げる丸いふくらみ。都会はいい。ぼんやり歩いていても何かがある。田舎は何もない。だいいち徒歩じゃどこにも行けない。ぼんやり車を運転していたら事故を起こす。田舎は人に優しくない。
 コーヒーショップに入る。小銭と文庫本があれば冷房の効いた洒落たスペースでいくらでも過ごせる。
「いらっしゃいませ」
「アイスティー」
「お久しぶりですね」
「うん。暇でね」
「優雅ですね」
「よく言われる」
「人生の目標ってあるんですか?」
「あるよ」
「どんな」
「君とデートすること」
「壮大な目標ですね。お待たせしました。アイスティーです」
 清楚な見た目で、気のきいた店員。昼と夜で、口紅を使い分ける。都会の。
 少し離れたテーブルで、若い女性二人が、おっぱいくっつけ大作戦について語っている。おっぱいくっつけ大作戦って何だ。まあ察しはつく。窓の外。都会のぎらつく日差し。孤独で人生に目標のない人種がパチンコ店に吸い込まれてゆく。もうしばらくここにいよう。清楚で美人な店員の立ち居振る舞いを、ちらちら盗み見ながら。

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