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転生

 汗と香水だか洗剤だかが混ざった甘酸っぱいにおいをさせた若い女が隣に座った。デニムのショートパンツから、むちっとした脚が伸びていた。トーストをむしゃむしゃやりながら、英語のテキストを開いた。たまに、音読した。
 俺は前世、女だった。まあまあの、いい女だったと思う。だが男運が悪く、過去を振り返っていつもくよくよくよくよしていた。そのせいで、転生してしまった。べつに生まれ変わりたかったわけではなかったのに。
 過去を振り返ってくよくよしないのは難しい。記憶力と、ものごとをつなげて考える能力がある以上、たらればの妄想は止められない。振り返らないための特効薬はない。
「過去も含めてあなたです」
 隣の女がつぶやいた。

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