あなたは二十代の女の子。非正規雇用の戦闘員。駅まで徒歩十分のワンルームマンションでひとり暮らし。朝六時半に起きて三十分で身じたくをすませ、七時ちょい過ぎに家を出る。今日は白のブラウスにカーキグリーンのロングスカート。シンプルだが、トレンドを押さえている。そして小さめのリュック。荷物が少ないということは整理整頓ができるということ。身じたくも早い。つまりあなたはなかなか気のきいた女の子。
あなたは改札を出て、いつものように朝食兼おやつのボローニャソーセージサンドを買いにコーヒーショップに入り列に並ぶ。すると横から中年男が割り込んでくる。よくあることだ。あなたは不快感をあらわにすることもなくただ黙って順番を待つ。中年男の番になる。中年男がボローニャソーセージサンドを注文する。店員が、ボローニャソーセージサンドは品切れだとこたえる。中年男の額に太い血管が浮かぶ。