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記憶

上から差す光だけを頼りにザングースのザンは、長く長くどこまでも続いているように思える白い階段を登っていた。

そうして、たどりついた白いドア。

ドアノブの下には小さな鍵を入れる鍵穴の金具が取り付けられていた。

ザンはその鍵穴に入る鍵を持ってはいなかった。

しかし、なぜかこのドアをみた時、鍵なんてなくても開けることができるという確信づいたものが胸の中でうずいていた。

前にここに来た記憶なんて、ひとつもないのに、そう思えたのだ。

ザンは、まるでいつもそのドアの向こうに行く常連のようにドアノブを回すと、一度も行ったことのないドアの向こうにある白い壁と質素な茶色い絨毯に海の覗く小さな縦長の窓のある部屋に、すべるように入っていった。

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