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夏の死体

 暑い…倦んでいる… なあ、君。思わないか、何故街はこうも倦み濁っているのだろう、と。いや、勿論解っている。これが平和、日常、平穏て奴なんだってことを。然しあまりにも鬱陶しい。

 暑い…倦んでいる… なあ、君。僕は視える気がするんだよ。何が、かって?夏だよ、夏。このあまりにも鬱陶しい倦怠の化身さ。いや、勿論解っている。視える訳がないってことを。然し視える気がしないかね?

 暑い…倦んでいる… なあ、君。思わないか、何故太陽だけが雲に隠れると、こうも腹立たしく恐ろしいのだろう、と。いや、勿論解っている。これが僕だけの認識だってことを。然しどうしようもなく恐ろしいのだ。

 暑い…倦んでいる… なあ、君 。僕は視える気がするんだよ。何が、かって?夏の死体がだよ、そして僕らを包んでるんだよ。いや、勿論解っている。そんな者在る訳がないってことを。然しあいつが生き還ろうとしてる気がしないかね?

君!夏だよ、夏の死体!あいつは何だい?初めは道に蛇のように佇んでるようだったんだ。
けど、僕は視たんだよ。視たのだよ‼周りを包んでいるんだ。夏の死体が。僕らはその中を進んでいるんだ。腐れたあいつの中を…

ああ、ああ、ああぁぁぁあ‼‼‼ 暑い…倦んでいる…

  • 「桜の樹の下には死体が埋まってる」風にしました。
  • 梶井基次郎の方ね
  • ***
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