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目が覚めたら猫になっていた少年の話

目が覚めたら猫になっていた
俺は犬派なのに…
緊急事態だけどそんなことが頭に浮かんだ
真っ黒くて柔らかで
それでいて芯の通った身体だ
鏡に映る俺は可愛いかった
美猫グランプリなんてものがあれば
俺は間違いなく優勝するだろうな

猫好きのあの子がそこの通りを通る
あの子のLINEのホーム画は
いつも道端で撮った猫の写真
俺の写真を撮ってくれないかなって
密かに思いながら飛び降りた

黒い服でうつむき歩いていた彼女は
口を「あ」の形にして
こっちに寄ってきた
わざと俺は寝たふりをしてやった
満面の笑みの彼女は
少し距離を取りながらスマホを向けて来た

シャッター音が聞こえない
どうしたんだよ、猫好きだろ?
俺が目を開けると、彼女は泣いていた

ねえ
あなたは

かすれ気味の声を聞いた

ねえ
俺は

俺は彼女の黒い服の意味に気づいた
そうか、だから俺は猫になったんだ

あげる
どっちにしろあなたにあげるものだったの

彼女が差し出したのはアングレカムの花束だ

待って
俺もあげたいものが

…たくさんあったんだ

口から出たのはミーという声
可愛い声だ、本当に。

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