猫だー!
そう言って駆けて行く私を
あなたは笑ってたっけ
俺は犬派なのに、のつぶやきから始まる
犬と猫どちらが可愛いかの
他愛もない言い争いが
私はたまらなく好きだったんだ
あ、
とっても可愛い黒猫を見つけた
そんな気分じゃないけどつい笑顔になって
スマホを向けてみる
肉球を合わせて縮まるように寝る猫に
私はハッとした
こんな風に寝る人間を、私は知っている
なぜか涙が溢れてきた
ねえ
あなたは
猫はこちらをまじまじと見ている
ふと思いついて呟いてみる
あげる
どっちにしろあなたにあげるものだったの
アングレカムの花束を差し出した
猫はミー、と鳴いた
着慣れない黒い服の裾を気にして立ち上がった
あなたに会いたいあまり
猫の中にあなたの姿を見てしまった、なんて
あなたが知ったら腹を抱えて笑うだろうな
振り返ると黒猫はまだこちらを見て鳴いていた
可愛い猫だ、本当に。