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五行怪異世巡『天狗』 その①

「よく来てくれたね」
種枚は集合時刻5分前にやって来た青葉を笑顔で迎えた。
「はい……しかしまあ、随分と軽装ですね。これから山登りなんですよね?」
登山準備を整えていた青葉とは裏腹に、種枚は普段通りの素足とパーカー姿に、荷物の一つも持っていなかった。
「私は良いんだよ別に。君は君の心配だけしていな」
「はい……そういえば、今日は何をするんですか?」
「ああ、天狗を狩る」
「…………天狗?」
「そう」
「狩る、ですか?」
「まあ、生け捕りにしても良いんだがね。ほれ、行くよ」
そう言って、種枚は青葉に手招きし呼び寄せる。近寄ってきた青葉に自身が被っていたキャップ帽を被せ、登山道を外れて山奥へ踏み入った。