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ただの魔女 その①

粘土・土塊・石ころ・木の根・砕けた舗装のアスファルト。
混ぜてくっつけ捻くれさせて、出来上がりますは自慢のゴーレム。
“emeth”なんて弱点つけて自動化せずに、都度都度指揮るマニュアル操作。
跳んで走って暴れ回って、殴って壊して傷つけて。
こうして“悪事”を働いていれば……。
「…………そら来た」
この猛然たる風切り音。“悪者”を打ち倒さんとする正義の味方。華美な衣装に身を包み、派手な魔法で平和を守る、みんなの憧れ。
「“魔法少女”……!」
街の危機に颯爽と駆け付けた魔法少女は、私の創ったゴーレムを、光を纏った剣で一閃。
たった一撃でやっつけてしまった。周囲の一般市民からも歓声が上がり、彼女も笑顔で手を振って応える。
まさにスター。ヒーロー……ヒロイン? 街のアイドル。みんなが彼女に憧れて、みんながあの子を好いている。
「…………気に食わないなぁ」
ゴーレムに魔力を送り込む。崩れた身体は再び歪に引っ付いて立ち上がる。
ほらほら頑張れ正義の味方。街の脅威がまた立ち上がった。
彼女の剣がまた閃いて、今度は綺麗に3等分。
「その程度?」
再び修復されるゴーレム。どうせ私がいる限り、何回だって再生されるんだから。そろそろ気付かないものかね?