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魔狩造物茶会 Act 20

「いや、まだまだ戦ってる途中なんだけど」
ナツィがそう言うと、ピスケスは違うわよと返す。
「私たちの目的はお前を取り戻すこと」
だから相手を倒す必要はないの、とピスケスはフューシャの顔を見る。
フューシャは驚いたような顔をしていた。
「それに私たちは近い内にまた会えるもの」
ピスケスがそう微笑むと、ヤマブキはまさか!と飛び跳ねる。
「ええ、そのまさか」
ピスケスは続ける。
「だから、首をよーく洗って待ってなさいな」
ピスケスはそう言うと、構えていた短弓と背中の白い翼を消して、行くわよと大通りに向けて歩き出す。
露夏やかすみ、キヲンもそれについていく。
ナツィは少し不満げな顔をしていたが、1つため息をつくと大鎌を消して歩き出した。
路地裏には呆然としたままの野良の人工精霊たちだけが残された。

〈魔狩造物茶会 おわり〉

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魔狩造物茶会 Act 19

「鉄紺!」
ピスケスと戦っていたヤマブキは思わず叫んで魔力式銃をナツィに向けようとする。
だが露夏が手持ちの包丁から火球を打ち出したことでヤマブキの魔力式銃は弾き落とされた。
「!」
フューシャはヤマブキに向かって駆け寄ろうとするが、フューシャの足元に矢が突き刺さったので立ち止まった。
フューシャが矢の飛んできた方を見ると、そこにはピスケスが短弓を構えていた。
フューシャは動きを止めたままピスケスを睨んだ。
「…これで、私たちの“勝ち”ね」
ピスケスが不意にポツリと呟く。
ナツィは、は?と首を傾げた。

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魔狩造物茶会 Act 18

「テメェ、アイツらをどうする気だ」
「…」
鉄紺はナツィの質問に答えない。
「…答えろっ‼︎」
ナツィはそう怒鳴ってどこからともなく大鎌を出すと、鉄紺に斬りかかった。
しかし鉄紺はナツィの攻撃をまるで先読みするかのように避けていく。
ナツィの斬撃はことごとく空回っていた。
「テメェ、どうしてよりによって俺の大切な人たちを…」
なんでなんだよ!と叫びながらナツィは大鎌を振り回す。
「なんで、なんで…」
ナツィがそう言いながら振り下ろした大鎌を、不意に鉄紺が両手の刀で受け止める。
ナツィは目を丸くした。
「…それは貴方たちが“学会”に」
「うっるせぇ‼︎」
ナツィは無理矢理鉄紺の刀を押し切ろうとする。
「テメェらにとってはただの敵だろうが、俺にとっちゃ…」
鉄紺の刀が力技で弾き落とされた。
「大切な身内なんだ‼︎」
そのままナツィは鉄紺の腹に飛び蹴りを喰らわせた。
鉄紺はうっとうめいて地面に転がる。
すぐに鉄紺は立ちあがろうとするが、ナツィが大鎌の切先を鉄紺の首元に向けたことで動きを止めた。

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魔狩造物茶会 Act 17

ヤマブキは魔力式銃をピスケスに向かって撃つが、ピスケスはそれを易々と避けていく。
そしてピスケスはどこからともなく出した短弓で矢を放った。
しかしここで緑色の肌のコドモことドゥンヤーがヤマブキの前に飛び出し、掲げた右手から光の壁を生成して矢を弾いた。
「ドゥンヤー!」
ヤマブキが思わず声を上げるが、一息に魔力を使い過ぎたのか光壁は消滅してドゥンヤーはへたり込んだ。
そこへ露夏が懐から出した包丁を持って駆け込むが、フューシャが右脚のホルスターから果物ナイフを取り出して露夏の攻撃を受け止める。
露夏とフューシャは互いの得物で鍔迫り合いをすると、フューシャは涼しい顔で露夏を弾く。
だが露夏は地面を転がるもすぐに立ち上がりフューシャに向かって飛びかかる。
2人は再度互いの武器で押し合った。
「…」
仲間たちが戦う中、後方で立ち尽くすキヲンとかすみに気付いた鉄紺は両手に1振りずつ刀を生成して駆け出そうとするが、不意においと呼び止められて立ち止まる。
鉄紺が声のする方を見ると、地面に座り込んでいたナツィがふらふらと立ち上がっていた。

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魔狩造物茶会 Act 16

「イブニング」
“学会“に倒されたオレたちの仲間だ、とフューシャは悲しげに言う。
「イブニングはオレたちを捕まえようとした“学会”の魔術師たちから逃げる時に、やられちまったんだ…」
フューシャがそうこぼすと、仲間たちも暗い顔をした。
「なるほど」
つまりあなたたちは“学会”に恨みがあるから“学会”の魔術師を襲うような真似をしていたのね、とピスケスは腕を組む。
フューシャはそうだ、と頷く。
「オレたちは“学会”を許さない」
そしてそんな“学会”に迎合する同族も…とフューシャは呟くが、ピスケスはあらそうと答える。
「残念だけど、私たちは“学会”の魔術師なしでは生きられない身なの」
あなたたちみたいにあっさり保護者を捨てられるくらい薄情ではないしね、とピスケスは続ける。
「でも、わたしたちも“仲間”が大切よ」
だから…とピスケスは目を細める。
「そいつを、返してもらうわ!」
そう言って、ピスケスは背中に白い翼を生やし飛び立った。

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魔狩造物茶会 Act 15

「動かないで」
近づくと撃つよとヤマブキは低い声で言う。
その様子を見た露夏はあの野郎…!と思わず歩き出そうとしたが、それをピスケスは手で制した。
「…あなたたちが噂の“魔術師を襲う”人工精霊ね」
ピスケスがフューシャたちに目を向けると、フューシャはあぁと頷く。
「“学会”には恨みがあるからな」
「恨みってなんだよ」
何かあったのか、と露夏は尋ねる。
フューシャは…そうだな、と言ってから淡々と語り出した。
「オレたちは元々、“学会”やそれ以外の組織の魔術師の使い魔だった」
フューシャは目を瞑る。
「だが主人との反りが合わなくて、オレたちは奴らから逃げ出したんだ」
そしてオレたちは出会い、仲間になったとフューシャは続ける。
「そうして暫く5人で暮らしていたんだが…」
「5人?」
お前ら4人じゃないのか?と露夏がここで首を傾げる。
フューシャは目を見開く。
「…本当は、オレたちは5人だった」
オレとヤマブキとドゥンヤー、鉄紺、そして…とフューシャは呟く。

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魔狩造物茶会 Act 14

「合理的にやるんなら消し飛ばすしかないだろ」
「そもそもそういう魔術使えないしー」
「なんだよソレ…」
フューシャとヤマブキが暫く言い合う中、不意に2人の後ろの方にいる緑の肌のコドモが何かに気付いたように…あと呟く。
「あれ…」
緑の肌のコドモが指さす方をフューシャたちが見ると、大通りの方から矢が飛んできていた。
「⁈」
ナツィ以外の4人は思わず飛び退いてそれを避ける。
ナツィが振り向くと、路地の入り口には見覚えのある4人が立っていた。
「来たわよ」
青い髪をたなびかせ弓を持ったコドモ…ピスケスはそう言って微笑む。
「助けに来たぜ」
ナハツェーラー、と赤髪のコドモこと露夏は被っているキャップ帽のつばを手で押し上げる。
「ナツィ!」
白いカチューシャに金髪のコドモ…キヲンはそう声を上げてナツィに駆け寄る。
ジャンパースカート姿のコドモことかすみも駆け寄ろうとするが、2人の足元に向かって魔力弾が飛んできた。
キヲンとかすみが顔を上げると、ヤマブキが拳銃のようなものを向けていた。

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魔狩造物茶会 Act 13

「やっぱり〜、口封じはちゃんとしなきゃだよねぇ〜」
ふふふとレモン色の髪のコドモは笑う。
ナツィは目を丸くする。
「という訳で鉄紺(てつこん)、ソイツ放しちゃっていいよ」
レモン色の髪のコドモがそう言うと、紺色の髪のコドモはあっさりとナツィの拘束を解いた。
急に解放されてナツィは地面にへたり込む。
「さーて、どうしようっかね〜」
レモン色の髪のコドモはナツィの顔を覗き込みつつ呟く。
「魔力式銃で蜂の巣にするのもいいけど〜、“学会”にはイブニングを倒されてしまったから思いっきり痛めつけるのもいいよね〜」
ノリノリで語るレモン色の髪のコドモに対し、フューシャはヤマブキ、とジト目を向ける。
「コイツとんでもなく強い奴らしいからさっさと倒さないと面倒だろ」
一瞬で肉体を消し飛ばすとかさ、とフューシャは続ける。
しかしヤマブキと呼ばれたレモン色の髪のコドモは、え〜と口を尖らせる。
「一瞬で消し飛ばしちゃつまんないよー」
もうちょっとじわじわやるとかさ〜とヤマブキは返す。

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魔狩造物茶会 Act 12

「放せ!」
ナツィは拘束してくる相手に対し声を上げるが、相手は黙ったまま拘束する。
少しの間その状態が続く中、不意に前方から…コイツかと声が聞こえてきた。
思わずナツィが前を向くと、マゼンタ色の短髪に尖った耳でストリートファッションを纏ったコドモがスカーフを頭に被った緑色の肌のコドモを連れてこちらに近付いてきていた。
2人と共にレモン色の髪のコドモも舞い降りてくる。
「コイツが昼間遭遇した人工精霊よ」
“黒い蝶”とかいう奴、とレモン色の髪のコドモはマゼンタ色の髪のコドモに言う。
マゼンタ色の髪のコドモはナツィの顔をふーんと覗き込む。
「ねぇどうすんの、フューシャ」
コイツあたしたちの所までわざわざ来たんだよ、とレモン色の髪のコドモはマゼンタ色の髪のコドモことフューシャの顔を見る。
「このまま放したら多分あたしたちのアジトが“学会”にバレちゃうだろうし」
レモン色の髪のコドモはそう言ってフューシャの答えを待つ。
フューシャは暫く考え込んだが、やがてこう言った。
「…そりゃあ、ボコすしかないでしょ」
「だよね〜」
レモン色の髪のコドモは明るく答える。

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魔狩造物茶会 Act 11

「⁈」
アンタまさか…!とコドモが気付くと、ナツィは外套の頭巾部分を外して顔を出した。
「昼間は随分世話になったな」
野良の人工精霊、とナツィは相手を睨みつける。
相手はっ…と後ずさり、魔力式銃をナツィに向ける。
「な、何しに来たんだよ‼︎」
アンタ!とコドモは声を上げるが、ナツィは淡々と仕返しだと告げる。
「テメェらが俺の保護者に手を出そうとした、その仕返しだ‼︎」
ナツィはそう叫ぶと大鎌を振り上げる。
しかし目の前のコドモは背中に蝶のような形の光る羽を出すと、パッと飛び立った。
「⁈」
ナツィは思わず驚くが、すぐに気を取り直して背中に黒い翼を生やす。
そして飛び立とうとしたが、背後から何者かに取り押さえられた。
ナツィが思わず後ろを見ると、紺色の長髪を高い位置で束ね、額にも1つ目がある袴姿のコドモがナツィを取り押さえていた。
「この魔力…お前も!」
ナツィは拘束を解こうと抵抗すると、相手はそれ以上の力で押さえつけてくる。
ナツィはすぐに動けなくなってしまった。