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Tell us terrible Terrors:あけて その⑲

“八尺様”の掌は二人を圧し潰すこと無く、代わりに彼女自身が地面に俯せに押し倒された。背後からの圧力に当惑し、周囲を見回しながら“八尺様”が身体を起こす。周囲に奇襲を仕掛けた犯人の姿は無い。気を取り直し、再び吉継を狙う。次の攻撃は遠心力の乗った強力な手刀だ。しかしそれが標的に命中することは無く、“八尺様”は体幹正面に強い衝撃を受けて吹き飛ばされた。
『ぎっ……ぎぃぃぃぃ!?』
何が起きているか、理解が追いつかない。それでも『目の前の少年を攻撃しようとすると、何故か自分だけがダメージを受ける』ということは、“八尺様”自身にも理解できた。理屈は分からないが、今彼を捕えようとすると、何故か自分にだけ不都合が起きる。
藻掻きながら身体を起こし、“八尺様”は這うようにしてその場を離れようとした。その背後で、吉継が“霊凛”を構える。
「せぇー……のっ!」
素振りの要領で、竹刀を全力で振り抜く。“八尺様”の脇腹に強烈な打撃ダメージが走り、その巨体が泥土の上を転がった。吉継と王蕗が接近してくる気配を感じながら、“八尺様”は動揺していた。本能のままに暴れているような生態の“八尺様”ではあるが、少なからず脳内で思考は巡らせている。その知能が、自身に迫る『死』と『恐怖』に警鐘を鳴らしていた。
「さて……永江くん、どうとどめる? 秋津さんの怪力が無い以上、地道に削り続ける他無いわけだけど」
「向こうから攻撃してくれるのが一番都合良いんですけど……」
「なるほど? 別動隊を活かしておいたのは正解だったね。もともと秋津さんに使ってもらう予定だったけど……」
農道の向こうから、コロポックルの集団が近付いてくる。彼らは打ち欠いた岩石と木の枝を組み合わせて作った『大剣』を担ぎ運んでいた。それを目に留めた瞬間、“八尺様”が先んじて動き、それを奪い取る。
『た、てた、いれ、てにいれた!』
“八尺様”は長い腕でその原始的な武器を振り回し、手応えを確かめる。未知の現象への恐怖に沈みかけていた彼女にとって、『殺傷力』の象徴たるそれは希望の糸にも等しかった。