LOST MEMORIES CⅢⅩⅠ
「傷、大丈夫?」
そう、彼は壁にひびが入るだけ叩きつけられたのだ。パプリエールはまた沸き上がってくる言葉たちを、どうにか飲み込む。それを言ったところで、きっと彼の意思は変わらない。
「大したことありません。」
彼もジュリアも、相当疲弊していることは、子どものパプリエールですらよく分かる。ここは、年長者に従うしかない。彼らの、子どもの頭ではまだ理解できない話しぶりから、自分たちでは到底太刀打ちできないなかにいることを自覚した。元はといえば、危険を省みず中へ戻ってきたのは自分だ。パプリエールはようやくまともな思考回路にたどり着いた。エルーナが黙っているようすから見て、彼も同様だろう。
「ジュリア、あなたは本当に優秀なんです。だから、年齢を満たしていなくてもプロジェクトメンバーに抜擢された。
今必要なのは、優れた翼とアンテナ。ふたりを助けられるのはジュリアしかいません。」