マリオネットガール
「今日の仕事も無事終わったよ、母さん」
赤い鼻のついた白い仮面を付けたまま僕は言う。
「そう、なら良かったわ。お疲れ様」
そう言って僕の膝の上に乗ってくる。
僕の母さんは猫だ。
右眼が紫色、左眼が黄色の黒猫。
この世では珍しいオッドアイ。
この世に来てからというもの、あっちでは「気持ち悪い」だの、そっちでは「化け物」だの。
僕はそう思わないのにな…綺麗な眼をしているじゃないか。
ま、かく言う僕も母さんと同じ眼をしているし、そう言われるのも無理はないんだけどね。
「この仕事を始めて何か変わった?」
母さんが突然聞いてきた。
「もちろん、僕の周りが全て変わったさ。人も物もあらゆるもの全てがね。おかげで夜も眠れるようになったよ」
「…貴方はピエロなんだから誰に何をしたって文句なんか言われないわ。時に人を笑顔にして、時に人を驚かす役目なんですもの」
そうだよ。
僕は人気者のピエロだ。
愚かな人間共を裏切るのが得意なんだ。
そして今日も。
ネオンぎらつく街角に立って、こちらを見てる少女たちに話しかける。
「はじめまして、お嬢さんたち。僕はピエロ」
「君たちを✕しに来たんだ」
あの時の借りを返すために____