傍観者
ボコンッ
鈍い音がした
液晶に落としていた瞳は前を向く
震えた
寒いからとか
そんな単純なものではなく
何と言えばよいか
とにかく
心が、震えた
ドクンッ
いつもより速く脈打つ
呼吸が荒くなる
みるみる青くなる
何にもしていないのに
本当に
何にもできないくせに
ピーポーピーポー
その音で我に返った
ホッとした自分が憎たらしい
自転車に再び跨った
何事もなかったように
本当に
知らないふうな顔して
ゴメンナサイ
誰に向けてかわからぬ謝罪
ただただ
ただただ
見知らぬ人の無事を祈るばかり
あの謝罪はきっと
自分を正当化するためだけの
弱い人間の防御策