不器用②
授業が終わり、もうすぐ下校の時間。
(たまには一緒に帰ろうかな)
帰りの学活が終わり、僕は声をかけた。
「ねぇ、一緒に帰ろ」
「うん。良いよ」
あの人と僕の帰り道は、徒歩10分くらいの最寄り駅まで一緒だ。いつもはお互い時間が合わなくて、
なかなか一緒に帰れないけれど、今日からしばらく部活はないし、あの人も放課後は特に何もないらしい。だから、一緒に帰ることにした。
「今日も疲れたね」
「そうだね。特に畑の整備…」
「確かに。腰が痛いもん。笑」
そんな何気ない会話をしながら、ゆっくりと僕たちは歩く。
(あ。そうだ。あれを出そう)
僕は思い出した。この時のために用意した、あれを…
「あのさ、」
「ん?どうした?」
「これ、ずっと渡そうと思ってたんだ」
僕はかわいい柄の封筒を渡した。
「なにこれ?まいっか。ありがと」
少し戸惑った表情をしていたが、無事に受け取ってくれた。
「それじゃ、また来週!」
「うん!またね!」
駅に着いた。
僕は、あの人が道を曲がるまで手を振って、見送った。
(なんで直接言えないんだろう…)
バスに乗り、ふと頭によぎった。